いっくんのお気に入り♡
「――――いっくん、何を買うの?」

「ん?
ほら、シャーベット買って帰らなかったでしょ?
だから、帰りに何か甘い物を買って帰ろうと思ってたんだ!
すっかり忘れてた(笑)
せっかくマンションに着いてたのに、ごめんね!」

「ううん!」
(……って、違うよね?絶対。
私を、あの人から遠ざけるためだよね)

聖愛は少し前を歩く壱茶の背中に、コツンと頭をくっつけた。

「ん?せいちゃん?
大丈夫?
もしかして、疲れてる?
やっぱ、帰ろうか?」
振り返り、聖愛の顔を覗き込む壱茶。

「ううん!
違うの」

「ほんとに?
無理しないで?」

「好き…いっくん…」
極々小さな声。

「え…///////どうしたの?急に//////」
それでも壱茶は、聞き逃さない。

「好きなの」

「フフ…うん!
僕も、せいちゃんが大好きだよ!」

「私、もっと綺麗になりたい…!
いっくんみたいに、綺麗な人に」

「え?」

(そうすれば、いっくんに気を遣わせなくて済むし、私ももっと自信が持てるようになる!)

「せいちゃんは、十分綺麗だし可愛いよ?」

「ううん!
もっと、もっと綺麗にならないと!」

「どうして?
僕以外の“誰に”綺麗に見せたいの?」

「え?」

「せいちゃんは、モテたいの?」

「ち、違うよ?」
(怒っ…て…る?)

「“僕が”せいちゃんを綺麗とか、可愛いって思うだけじゃダメなの?」

「だ、ダメじゃないよ?
そうゆう意味じゃなくて……!」
(怒らないでぇ…)

「よく、みんな言うよね?
“綺麗になりたい”“カッコ良くなりたい”って。
それって“誰に向けてなの”?
せいちゃんが、有名人ならわかるよ?
沢山の人にそう思ってもらわなきゃだから、もっともっとって欲を持つんだと思う。
でも、一般の人達には必要ないよね?
特定の人に、そう思われたら十分じゃない?
僕は“せいちゃんだけに”カッコ良いって思われたら、それだけでいい。
だから、努力してる。
せいちゃんに飽きられないように。
だいたい、モテたところで“本当に好きな人に好かれなきゃ意味がない”」


そして―――――コンビニでアイスを買って、今度こそ自宅マンションに帰った二人。

ソファに並んで座り、食べている。

「ん!この新発売のアイス、美味しいね!」
壱茶が微笑み言う。

そんな壱茶に、聖愛は「ごめんなさい…」と頭を下げた。
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