いっくんのお気に入り♡
聖愛の実家のチャイムが鳴り響いている。

「………あ…壱茶くん」  

聖愛は母子家庭で、母親が出てきた。 

「あ!お義母さん!
すみません!
せいちゃんに会わせてください!!」

「………ごめんね。聖愛、どうしても会いたくないって言ってるの……」

「どうして……
あ、あの!
理由!理由がわからないんです!
お義母さん、何か聞いてませんか!?
スマホの電源も切ってて、僕には何が何だか……」

「それも教えてくれないの…
ただ…“壱茶くんに会いたくない”って、それだけ…」

「そんな……どうして……」

「ごめんね、とりあえず帰ってくれない?
私も、聖愛に聞いてみるから!」

「………わかりました…
また、明日も来ます…」
壱茶は、項垂れるように聖愛の実家を後にした。


その姿を、窓から見つめていた聖愛。
聖愛の頭の中には“あの写真が”こびりついていた。

部屋にノックの音がして、母親の声がドア越しにしてくる。
「聖愛、壱茶くんが来てくれたわよ!
いい加減、理由を話しなさい!
壱茶くん、凄く心配してたわよ!!」

「ごめん…お母さん…
まだ、心の整理がつかないの…」

「はぁ…また明日も来るって言ってたわよ!
何があったかわからないけど、二人は“夫婦”なのよ!?
ちゃんと、話し合いなさい!」

「………」

何を? 
話し合ったりなんかしたら、答えは一つじゃない? 

離婚を切り出されるに決まってる。

いっくんと、別れたくない。

私の最愛の旦那さんなのに…… 

「どうして……
私の何がいけなかったの!?」

“僕にはせいちゃんだけ”

そう言ってくれてたじゃない?!

あの言葉は、嘘だったの!!?

嫌だ!
嫌だ!
嫌だ!


聖愛はうずくまるように、その場にへたり込んだ。

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