いっくんのお気に入り♡
聖愛が実家に帰って、二週間が経った―――――

その間壱茶は、毎日“せいちゃんに会わせてください!”と実家に通っていた。

「聖愛。
今日も、来てくれたわよ。
今日はこれ」

そう言って母親から渡されたのは、聖愛の好きなキャラクターのぬいぐるみ。

この二週間、毎日壱茶は聖愛の好きなスイーツや雑貨などをプレゼントしていた。

「聖愛、いい加減会ってあげなさい。
壱茶さんが可哀想で堪らないわ…
毎日、泣きそうな顔で“会わせてください!”って言ってくるのよ?
お母さん、それを対応するの苦しい……」

聖愛は、ぬいぐるみを抱き締めた。

涙が溢れてきた。

聖愛だって、会いたくて堪らないと思っている。
でも、離婚を切り出されるのが怖くて、足がすくむのだ。

「聖愛。
せめて、お母さんに理由を聞かせて?
そしたら、壱茶くんとお母さんが話してもいいわ」

しかし聖愛は、頑なに首を横に振り続けていた。


その日の午後。

「――――あれ?おばさん!?」

「ん?
あ!アツコ…ちゃん!?」

「はい!
ご無沙汰してます!!」

母親が買い物中。
スーパーで、アツコとヒビト夫婦にばったり会ったのだ。

「えぇ!
あ、こちらは旦那さん?
結婚、おめでとう!!」

「フフ…ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」

「フフ…お似合いね!」

「ありがとうございます!
…………あ!そうだ!
聖愛、今どうしてるか知りません?
スマホ全然繋がらなくて……
家にも、いつ行ってもいなくて。
壱茶くんの連絡先も私達知らないので、おばさんならわかるかなって!」

「あ……」

「ん?おばさん?」

「それがね………
―――――――」


聖愛の部屋の前。
話聞いたアツコが立っている。

ノックをしながら、声をかける。
「聖愛!聖愛!私、アツコ!開けて!?」

「え……アツコちゃん!?」
中から、聖愛の声が聞こえる。

「聖愛!開けて!!
じゃないと、ヒビトに蹴破ってもらうわよ!!?」

すると「え!?」と声が聞こえて、ガチャ…とドアが開いた。

「アツコちゃん…」

「聖愛…
中、入れて?」

「うん…
ヒビトくんは?」

「いない。
家に帰ってもらった。
いない方がいいじゃないかなって思って」

「ありがとう…」

聖愛は、アツコを部屋に入れた。
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