いっくんのお気に入り♡
いっくん、キレる
こちらは、下園達会社の同僚が飲み会をしている居酒屋。

下園達は、定期的に同僚のみんなで飲み会をしている。その中には、鞠野もいる。
(ちなみに壱茶は、無理矢理連れてかれたあの一回のみ)


突然……バン!!!と、個室の扉が開いた。

「びっ…びっくりした……」
「え……門川?」

「え……な、なんか…」
「こ、こえぇ…」

壱茶が、黒い雰囲気を醸し出して立っている。 
そして壱茶の後ろには、アツコに支えられるようにして聖愛もいた。

なんとも言えない無表情で、常に笑顔の壱茶からは考えられない。

「鞠野」

「え……」

壱茶とは思えない、低く重い声色。
鞠野は、ビクッと震えた。

「この写真、知ってるよな?」

壱茶が“あの写真”が見えるようにテーブルにスマホを置いた。

「なんだよ、これ…」
「え?え?
門川と鞠野?」
下園達が信じられない思いで、写真と鞠野を見ている。

「え……なん…で……!?」

「“なんで?”
それ、こっちのセリフなんだけど?」

「あ…」

鞠野は、一瞬で考えを巡らせた。
あの後部屋に戻りスマホを確認したが、壱茶からのメールが入ってなかった。

間違えて違う人に送ったのはなんとなくわかっていたが、あれから壱茶が何も知らないようだったので、相手は特に影響ない人なのだと安心していたのだ。

聖愛と鞠野。

ふりがなは“まりあ”と“まりの”

壱茶のスマホ内の電話帳。
聖愛の下が、鞠野だったのだ。

「………」
(私、奥さんに送っちゃったの!!?)

鞠野は、今、事の重大さに気づいたのだ。

「身に覚え、あるみたいだね」

「あ…あの……」

「お前は、最低だ」

「え……」

「聖愛がこの写真を見た時、どんな思いだったと思う?
この二週間、僕達がどんな思いで過ごしたと思ってる?
僕達に何の恨みがある?
僕達がお前に何をした?
とにかく、お前には怒りしか湧かない」

「あの、ごめ………」

「僕に謝ってほしいんじゃない」

「え?」

「―――――二つ」

「え?」

「今、ここで、僕達と二つ約束しろ。
一つ!今すぐ、聖愛にきちんと謝罪をすること」

「あ…」

「もう一つは“二度と僕達の前に現れるな”」

壱茶は完全にキレていた。
それでも冷静に、突き刺すように鞠野に言い放ったのだ。


鞠野がゆっくり立ち上がり、聖愛の前に向かう。

「奥さん、ごめんなさい…」

「あ、あの…これは、嘘なんですか?」
聖愛が一番確認したいことだ。

「はい。
門川さんは、ただ“普通に”寝てただけです…
私が下園さんのスマホを届けた時に、部屋の中に入って、ほんの悪戯心で撮った写真です。
門川さんは、何も知りません。
本当に、すみませんでした…」

鞠野は、全て正直に聖愛に告白した。
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