いっくんのお気に入り♡
せいちゃんを選んだ決め手
僕は幼少期、今の僕とは正反対だった。

背が小さくて、少し太ってて、それに笑顔を知らなかった。


僕の両親は共働きで、ほとんど“家族で過ごしたことがない”

いつも忙しくて、僕の相手は家政婦のニドウさんだけだった。

友達もいなくて、いつも一人だった僕。

ニドウさんはロボットみたいな人で、家事や僕の世話は完璧だったけど、まるで機械みたいに業務をこなすだけだったから。


そんな時に出逢ったのが、せいちゃんだ――――――

せいちゃんは覚えてないようだが、僕達は小学生の時に出逢っている。

僕の住むタワマンの近くの公園。
そこにいつもせいちゃんはいた。

せいちゃんは母親とよく来てて、僕と違っていつも笑っていた。

その笑顔が眩しくて、羨ましくて、僕はせいちゃんと友達になりたくて話しかけた。

人見知りのせいちゃん。
最初はいつも母親の後ろに隠れて、僕には笑顔を見せてくれなかった。

でも毎日話しかけてると、次第に僕に笑ってくれるようになったんだ。

そんな時、せいちゃんが言った。

『サキミヤくんは、どうして笑ってくれないの?』と。

あ!
“サキミヤ”ってのは、僕の旧姓ね。
僕が中学生の時、親が離婚したから。

『笑い方がわからない。
教えて?』
と言うと、せいちゃんはクスクスって笑って言った。

『笑い方は、教わるモノじゃないよ?
ママが言ってた。
“感情は、教えてもらうものじゃない。
自分で掴むもの”だって!』

『そうなの?』

『うん!
だから………
“私が、笑わせてあげる”』

そう言ってくれたんだ。

次の日からせいちゃんは、お笑いのビデオや雑誌などを持ってきて僕に見せた。

そしてある日。
『初めて作ったの!』
と、手作りのクッキーを作ってきてくれた。

そのクッキーは味がしなくて、正直美味しくなかった。
するとせいちゃんが……

『んんっ!!
これ、何!?
不味い!!!』

眉間にシワを寄せて、言ったせいちゃん。

その瞬間………

『フフッ…!!』
僕は思わず、噴き出してしまった。

『え……サキミヤ…くん?』

目を見開くせいちゃん。

『え?』

『笑った!
初めて、笑ってくれたね!!』

せいちゃんが、今までで一番綺麗な笑顔で言ったんだ。
< 50 / 51 >

この作品をシェア

pagetop