隣の家の天才クラリネット演奏者が、甘すぎる愛を注いできます
そして今、職場でチケットを握りしめたまま私はコンサートの演奏者の名前欄に書かれている凛也さんの名前を見ていた。

色んな演奏者が出演する中で、凛也さんの名前は一番前に書かれている。

凄い人なのは分かっていたのにそのことを実感してしまうと、凛也さんと何処か距離を感じてしまう。

「本当は話すことも出来なかった人なんだよね……」

凛也さんは「誰にでも教えるわけではない」と言っていたけれど、本当は私だって教えてもらえるはずは無かったわけで。

だって偶然隣の家に住んでいただけ。

それでも、レッスンの時の凛也さんは厳しいけれど、ちゃんと私に合わせて教えてくれる。

凛也さんは全然嫌な厳しさじゃない。

それに私をからかう時だって、私が本当に嫌がることは当たり前だけどしない。

私はチケットに書かれている日時に視線を移す。

日程は明日の11時から。


「うん、折角ならちゃんと聴いて楽しんでこよう」


私はチケットをバックの中のファイルにしまって、お昼ご飯を食べ始めた。
< 24 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop