隣の家の天才クラリネット演奏者が、甘すぎる愛を注いできます

「間違っても良いですよ」

「え……！？」

「まぁ、もちろんミスがないに越したことはないですし、常に最高の演奏を心がけて欲しいですけれど……楽しく演奏することが大切なことも事実なので」

「でも……」

「少なくても想乃さんの場合、プレッシャーを感じてミスをしてしまうよりのびのびと弾いていた時の方がよほど良い演奏でした」

凛也さんに急に言われても、バーでの演奏まで時間がないのも事実だからすぐに受け入れられない。

「……想乃さん、前も言いましたが二週間で根本的な技術向上は難しい。所詮(しょせん)二週間で向上できることは、限られています」

「はい」

「それにバーでの演奏はコンテストではありません。聴いてくださるお客さんを楽しませるのが一番の目的です。ならば、まず想乃さんが楽しんで下さい」

凛也さんがニコッと微笑んだ。