隣の家の天才クラリネット演奏者が、甘すぎる愛を注いできます
「って、私なんかじゃ励ましにならないかもしれませんが……」

涙を拭った顔のまま、ぎこちなくそう笑った。

凛也さんはそんな私の言葉にサラッと答えた。

「なりますよ。想乃さんの素直な言葉はちゃんと励ましになります」

凛也さんが私の目が涙の跡で赤くなっているのをじっと見つめている。


「凛也さん?」


「涙、溢したって良かったのに」


「え……?」


「無理に我慢しなくてもいいんですよ。僕の前でなら安心して泣いて下さい」


凛也さんがそっと私の頬を手で撫でる。

凛也さんの瞳に私が映っているのが見えた気がした。
< 36 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop