隣の家の天才クラリネット演奏者が、甘すぎる愛を注いできます
「想乃さん、緊張していますか?」

「少し……」

「前も言いましたが、緊張しなくても大丈夫ですよ」

私は凛也さんが前に言ってくれた言葉を思い出した。


「前も言いましたが、少なくとも私は想乃さんの音色に惹かれるものを感じています。多少の失敗で私が想乃さんの演奏を素敵だと思っていることは変わりません」

「だから安心して演奏して下さい」


少し緊張がほぐれた気がして、私は嬉しくなった。

「想乃さん、手を出して下さい」

「……?」

私はそっと片手を広げた。

凛也さんが私の手を両手でギュッと握る。


「想乃さんの演奏が成功しますように……!」


凛也さんがわざと冗談めかして、大きな声でそう言った。

「あはは、凛也さん子供みたい!」

「想乃さんに合わせてあげたんです」

「っ!?その言葉は聞き捨てなりません!」

そんないつものやり取りに気づけば、私の緊張はどこかに行ってしまっていた。
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