隣の家の天才クラリネット演奏者が、甘すぎる愛を注いできます
緊張した時に思い出すのは
バーでの演奏当日、私は控え室で演奏の準備をしていた。

緊張で少しだけ手が震えている。

私はギュッとクラリネットの入ったケースの持ち手を握りしめて、震えを抑えた。

その時、控え室の扉がコンコンとノックされた。

「大原さん、そろそろ舞台袖(ぶたいそで)に移動しても大丈夫です」

バーのスタッフの方がそう伝えに来てくれる。

私はバーのスタッフさんに案内されて、舞台袖に移動した。

ステージの横にかかっている黒いカーテンの隙間から、客席の一部が見える。

無意識に凛也さんを探してしまったが、見つけることは出来なかった。

その時、スタッフさんがパタパタと私に駆け寄ってきた。

「あと5分ほどで演奏を始められますか?」

「はい」

バーのマスターが今日知り合いがクラリネットを演奏してくれるとお客さんに伝えてくれていたようで、こちらから見えるお客さんはステージの方を向いていた。
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