隣の家の天才クラリネット演奏者が、甘すぎる愛を注いできます
お客さんはみんなお酒を飲みながらも、ステージで披露される演奏を楽しみにしているようだった。

正直、緊張するけれど……


「ちゃんと客席から聴いてますよ」


その凛也さんの言葉を思い出すと、緊張より楽しみが勝つ気がした。

それにこの二週間の頑張りも事実で、絶対に二週間前よりは良い演奏が出来る自信がある。


「大原さん、そろそろお願いします」


そう声をかけられ、私はステージに上がった。

ステージに上がる時に歩く床の感触がいつもと違うくらいフワフワとして感じる。

やっぱり全く緊張しないなんてことは無理だった。

客席を上手く見れないまま、呼吸を整えて私は演奏を始めた。

演奏を始めると、自然と落ち着いたような……自分を客観視出来るような不思議な感覚に(おちい)って、演奏は順調に進んでいく。

演奏も中盤に差し掛かると、客席に目を向けることも出来た。
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