隣の家の天才クラリネット演奏者が、甘すぎる愛を注いできます
「ゆっくりでいいですよ」

男性の優しい声色に安心して、私は素直に今の状況を話してしまった。

エアコンが壊れたこと、クラリネットを弾いていること、隣の家に誰も住んでいないと思っていたこと。

男性は私の突拍子もない話を静かに聞いてくれていた。

「すみません。本当に誰も出て来ないと思っていて……お隣に人が住んでいるのなら、もちろんクラリネットは吹かないので安心して下さい」

私の言葉に男性はきょとんとした顔をした。

「吹かないんですか?」

「え……だって、迷惑になるので……」

すると、男性は急に眼鏡を外した。

そして、私の顔を覗き込む。

突然近づいたイケメンに私は固まってしまった。

「あ、あの……!」

「クラリネットが趣味なのですよね?私の顔、ご存知ないですか?」

「はい?」

言っている意味が分からない。
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