隣の家の天才クラリネット演奏者が、甘すぎる愛を注いできます
その髪留めをつけたまま
その次の週の土曜日、私はいつも通り鏡の前に立っていた。

いつもの練習に向かう服よりも少しだけ可愛めの服を選んだ。

髪型もいつもは結んでいるけれど、今日はヘアアイロンをして下ろしている。

正直、凛也さんを意識していないと言ったら嘘になるし……何より可愛いと思われたいと思ってしまっている。

そんな自分の気持ちを認めたいような認めたくないような不思議な感じがしながら、私は家のチャイムが鳴るのを待っていた。

ピンポーン、とチャイムの音が鳴って、私は玄関に早足で向かった。

玄関の扉を開けると凛也さんが立っている。

凛也さんもいつもよりカジュアルな服装をしていた。

「想乃さんに出迎えられるなんて、いつもと逆ですね」

凛也さんの言葉に緊張して上手く返事が出来ない。

「今日は想乃さんと行きたいことろがあって……僕の車で向かっても大丈夫ですか?」

私が頷くと、凛也さんが「では、車を取ってきますね」と隣の家に入っていく。
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