隣の家の天才クラリネット演奏者が、甘すぎる愛を注いできます
「ダメとかではないですけど……でも……」

「じゃあ、聞かせて下さい」

案外男性が強引で譲ってくれない。

「じゃあ、私の家で窓を開けて弾きますね。どれくらい音が漏れるかも気になるので……」

私は状況が理解出来ないまま、家まで戻って窓を開けた部屋で一曲演奏する。

そしてもう一度、靴を履いて隣の家に向かった。

「音、どれくらい漏れましたか?」

男性が顎に手を当てて、何かを考えている。

「今の曲はバーで演奏する曲ですか?」

「??……はい」

「バーでの演奏まであとどれくらいでしたっけ?」

「え?二週間ですけど」

「結構厳しいな」

「……?」

すると、男性が「お隣さん、お名前を教えていただいても?」と聞かれた。

「大原 想乃(その)です……」


「想乃さん、明日から特訓です」


男性がクスッと笑った。
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