婚約破棄された悪役令嬢は、階段から突き落とされ記憶を失う。気がつけば召使いに〜
第9話 な、な、何をなさるのですかっ!
ああ、気分がいいわ。サラーニャさまの折檻であちこちに傷があるけど不思議と痛みが癒えていく感じがする。何てことでしょう……。
「前世の記憶は断片的だけど蘇ってきます。貴女を取り巻く環境はね、敵味方問わずに多くの仲間が居るのよ。それを思い出して正しく判断して欲しいの……」
「聖女さまが仰るのであれば、わたくしは従うまでです」
ふいにモエミアンさまに抱きしめられた。
「ありがとう。私はこの瞬間のために生きてきたようなもの。本当にありがとう。そして……さようなら、ララコ」
***
あれから数日が経つ。相変わらずの日々を過ごしているが、サラーニャさまから折檻されても傷みを殆ど感じることがなかった。でも記憶は戻らない──。
「ララコスティさま……あの、タカフミィーニさまがお越しになってますが……」
アプレンが申し訳なさそうに伝える。これまでわたくしの想いを組んでわたくしに伝えるまでもなく丁重にお断りしてたはずが……。
「アプレン……いつもごめんなさい。逢うことはできません。お断りしてください」
「ララコスティさま、もう我慢することはないですよ! 僕が外で見張ってるからお逢いしてください。いいですね、扉を開けます!」
「アプレン、どうしたの⁈ ダ、ダメよ!」
「ララコスティさまの寂しいお顔はもう見てられないよう!」
バーンと扉が開いた。
「ああっ」
思わずわたくしは手で顔を隠す。でもその手はタカフミィーニさまに握られ、そっと胸元まで下げられた。
め、目の前にタカフミィーニさまが居る、居る、居るよ!
「タカフミィーニさま、いけません」
「全てはアプレンから聞いています。ご心配でしょうが私は貴女の力になりたいのです」
「タカフミィーニさま……」
ああ、ドキドキして胸が張り裂けそう!
「今日は貴女にお伝えすることがあって参った次第です。……先日、私の母が亡くなりました──」
「え⁈ モエミアンさまが⁈」
「はい。最後は安らかな眠りでした」
「そ、それはご愁傷さまでございます」
「それで、母から最後の言付けを実行したく……」
「なんでしょう?」
「し、失礼!」
それは一瞬の出来事だった──。タカフミィーニさまの唇がわたくしの唇へ触れた……。
「な、な、何をなさるのですかっ⁈」
わたくしはタカフミィーニさまの不意打ちキスに気が動転した。顔が真っ赤になり、息苦しさを感じてクラクラする!
「申し訳ございません。母から貴女へキスをするように言付かったのです。そうすれば貴女の記憶を取り戻せると……」
「そ、そんなことって……」
わたくしはその場で意識を失った──。
「前世の記憶は断片的だけど蘇ってきます。貴女を取り巻く環境はね、敵味方問わずに多くの仲間が居るのよ。それを思い出して正しく判断して欲しいの……」
「聖女さまが仰るのであれば、わたくしは従うまでです」
ふいにモエミアンさまに抱きしめられた。
「ありがとう。私はこの瞬間のために生きてきたようなもの。本当にありがとう。そして……さようなら、ララコ」
***
あれから数日が経つ。相変わらずの日々を過ごしているが、サラーニャさまから折檻されても傷みを殆ど感じることがなかった。でも記憶は戻らない──。
「ララコスティさま……あの、タカフミィーニさまがお越しになってますが……」
アプレンが申し訳なさそうに伝える。これまでわたくしの想いを組んでわたくしに伝えるまでもなく丁重にお断りしてたはずが……。
「アプレン……いつもごめんなさい。逢うことはできません。お断りしてください」
「ララコスティさま、もう我慢することはないですよ! 僕が外で見張ってるからお逢いしてください。いいですね、扉を開けます!」
「アプレン、どうしたの⁈ ダ、ダメよ!」
「ララコスティさまの寂しいお顔はもう見てられないよう!」
バーンと扉が開いた。
「ああっ」
思わずわたくしは手で顔を隠す。でもその手はタカフミィーニさまに握られ、そっと胸元まで下げられた。
め、目の前にタカフミィーニさまが居る、居る、居るよ!
「タカフミィーニさま、いけません」
「全てはアプレンから聞いています。ご心配でしょうが私は貴女の力になりたいのです」
「タカフミィーニさま……」
ああ、ドキドキして胸が張り裂けそう!
「今日は貴女にお伝えすることがあって参った次第です。……先日、私の母が亡くなりました──」
「え⁈ モエミアンさまが⁈」
「はい。最後は安らかな眠りでした」
「そ、それはご愁傷さまでございます」
「それで、母から最後の言付けを実行したく……」
「なんでしょう?」
「し、失礼!」
それは一瞬の出来事だった──。タカフミィーニさまの唇がわたくしの唇へ触れた……。
「な、な、何をなさるのですかっ⁈」
わたくしはタカフミィーニさまの不意打ちキスに気が動転した。顔が真っ赤になり、息苦しさを感じてクラクラする!
「申し訳ございません。母から貴女へキスをするように言付かったのです。そうすれば貴女の記憶を取り戻せると……」
「そ、そんなことって……」
わたくしはその場で意識を失った──。