このたび、お見合い相手の御曹司と偽装結婚いたします~かりそめ妻のはずが旦那様の溺愛が溢れて止まりません~
「あら、言ってなかったかしら。柊君は紫乃ちゃんの息子さんよ。三十歳って言ってたと思うわ。ユイメディカルを継いで社長になるイケメンなの。美汐ちゃんと柊君が結婚したら、大我さんの会社のためになると思うわ。だってどっちも病院がお得意様だもの、似てるでしょ?」

沙織はキラキラとした目を大我に向ける。

「大我さんは美汐ちゃんが会社の役に立てば、満足なんでしょう?」
「ちょっと待って。いきなり結婚なんて言われても困る」

美汐は慌てて声を挟む。
大学卒業後は早々に結婚の話が持ち込まれるだろうと覚悟しているが、受け入れるつもりはない。

「それにお母さんの思いつきに紫乃おばさまがOKするわけないでしょう? ユイメディカルの後継者の結婚なら、なおさら断るに決まってる」

ユイメディカルは世界的に名が知られた業界トップの医療機器メーカーだ。
沙織の小学生時代からの親友である結川紫乃はユイメディカル社長の結川佑の妻で、美汐も何度も顔を合わせている。
息子がいることは知っていたが、これまで会った記憶はない。
沙織の突飛な思いつきには慣れているものの、他人を巻き込む安易な考えは論外だ。
たとえ学生時代からの親友である紫乃でも、家業の後継者である大切な息子の結婚には慎重になるはずだ。

「ふふっ。紫乃ちゃんはOKしてるわよ。だってふたりのお見合いを思いついたのは紫乃ちゃんだもの」
「嘘っ」

美汐は声をあげる。

「嘘じゃないわよ。大我さんには後でお話するつもりだったんだけど、ちょうどよかったわ。柊君と美汐ちゃんが結婚したら私と紫乃ちゃんは親戚ねって、ふたりで決めたの。うふふ。楽しみだわ」
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