このたび、お見合い相手の御曹司と偽装結婚いたします~かりそめ妻のはずが旦那様の溺愛が溢れて止まりません~
「意外だな。親に溺愛されている甘ったれたお嬢さんだと思っていたが、違ったようだな。悪い、言いすぎた」
柊は申し訳なさそうに言葉を続ける。
「振袖をいくつも仕立ててもらえるくらいだし、相当甘やかされてると想像したんだ。申し訳ない」
ほんのり赤くなった耳が目に入り、美汐は口元を緩めた。
それでも端整な顔が崩れることはなく、逆に大人の色香が増してそわそわする。
「いえ、それは全然。でも……溺愛ですか」
美汐は目を瞬かせた。大我にはまるでしっくりこない。
同時に沙織のスマホで美汐の振袖姿を見ていた時の柊の冷ややかな表情は、これが理由だったのだと腑に落ちた。
親に甘やかされて育った、単なるわがまま娘だと思っていたのだろう。
そのわがまま娘との見合いに駆り出されたとなれば、あの表情にも納得できる。
「どうかした?」
「いえ、なんでもないです。それより温かいうちに食べませんか? 実は緊張していて、朝もあまり食べてなくて」
やはり柊との縁はなさそうだ。
だったら早く食事を済ませて柊を解放してあげなければと、美汐は箸を手に取った。
「ユイメディカルは内視鏡手術で使う器具が有名なんですね。他にも画像診断用の装置とか。あ、再生医療の研究にも熱心だと専門誌に書いてありました」
思いがけず、美汐は柊との会話を楽しんでいた。
こうしてふたりで会うのは今日限りだと思うと気が楽になり、口数も多くなる。
見合いが決まってからというもの柊に気に入られなければと気合いが入り、彼が後を継ぐユイメディカルについて勉強した。
柊は申し訳なさそうに言葉を続ける。
「振袖をいくつも仕立ててもらえるくらいだし、相当甘やかされてると想像したんだ。申し訳ない」
ほんのり赤くなった耳が目に入り、美汐は口元を緩めた。
それでも端整な顔が崩れることはなく、逆に大人の色香が増してそわそわする。
「いえ、それは全然。でも……溺愛ですか」
美汐は目を瞬かせた。大我にはまるでしっくりこない。
同時に沙織のスマホで美汐の振袖姿を見ていた時の柊の冷ややかな表情は、これが理由だったのだと腑に落ちた。
親に甘やかされて育った、単なるわがまま娘だと思っていたのだろう。
そのわがまま娘との見合いに駆り出されたとなれば、あの表情にも納得できる。
「どうかした?」
「いえ、なんでもないです。それより温かいうちに食べませんか? 実は緊張していて、朝もあまり食べてなくて」
やはり柊との縁はなさそうだ。
だったら早く食事を済ませて柊を解放してあげなければと、美汐は箸を手に取った。
「ユイメディカルは内視鏡手術で使う器具が有名なんですね。他にも画像診断用の装置とか。あ、再生医療の研究にも熱心だと専門誌に書いてありました」
思いがけず、美汐は柊との会話を楽しんでいた。
こうしてふたりで会うのは今日限りだと思うと気が楽になり、口数も多くなる。
見合いが決まってからというもの柊に気に入られなければと気合いが入り、彼が後を継ぐユイメディカルについて勉強した。