このたび、お見合い相手の御曹司と偽装結婚いたします~かりそめ妻のはずが旦那様の溺愛が溢れて止まりません~
柊との結婚を足がかりにして千早不動産に入社しようと考えていたが、ここにきてそれはできないと認識したばかりだ。
「ありがたいお話ですけど、結川さんとの結婚は無理だと思います」
一瞬、柊の申し出を受け入れてしまおうかと考えたが、それはできない。
「どうして? 君にとっても悪い話じゃないと思うが」
美汐の言葉に動揺するでもなく、柊は答える。
「もちろん私もそう思います。望み通りの会社で働けるって考えたら、とても魅力的です」
「だったら」
「だから無理なんです」
美汐はそう言って姿勢を正した。
「結川さんと結婚すれば千早不動産に入社できる。私はそんな打算があってお見合いすることにしたんです。父からの面倒な条件をクリアすれば、夢を叶えられると思って……」
しっかりと伝えなければと思いながらも、次第に声が小さくなる。
「でも」
美汐は束の間目を閉じ気持ちを切り替えると、再び口を開いた。
「結川さんにお会いして、打算や下心があるような私は結川さんにふさわしくないと思ったんです。それどころかこんな私じゃこの先ユイメディカルのトップに立つ結川さんの足を引っ張ってしまいます。だから結婚はできません」
柊にとってもこの見合いは紫乃に強引に駆り出されただけで、美汐との結婚はもともと頭になかったはずだ。
結婚しようと提案してくれたのも、思うように生きられない美汐に同情したからだろう。
単なる気の迷い。きっとそうだ。
柊が望む相手なら、きっと見つかる。柊にふさわしく、彼を支える素敵な相手が。
美汐の胸にじわりと寂しさが広がっていく。
「ありがたいお話ですけど、結川さんとの結婚は無理だと思います」
一瞬、柊の申し出を受け入れてしまおうかと考えたが、それはできない。
「どうして? 君にとっても悪い話じゃないと思うが」
美汐の言葉に動揺するでもなく、柊は答える。
「もちろん私もそう思います。望み通りの会社で働けるって考えたら、とても魅力的です」
「だったら」
「だから無理なんです」
美汐はそう言って姿勢を正した。
「結川さんと結婚すれば千早不動産に入社できる。私はそんな打算があってお見合いすることにしたんです。父からの面倒な条件をクリアすれば、夢を叶えられると思って……」
しっかりと伝えなければと思いながらも、次第に声が小さくなる。
「でも」
美汐は束の間目を閉じ気持ちを切り替えると、再び口を開いた。
「結川さんにお会いして、打算や下心があるような私は結川さんにふさわしくないと思ったんです。それどころかこんな私じゃこの先ユイメディカルのトップに立つ結川さんの足を引っ張ってしまいます。だから結婚はできません」
柊にとってもこの見合いは紫乃に強引に駆り出されただけで、美汐との結婚はもともと頭になかったはずだ。
結婚しようと提案してくれたのも、思うように生きられない美汐に同情したからだろう。
単なる気の迷い。きっとそうだ。
柊が望む相手なら、きっと見つかる。柊にふさわしく、彼を支える素敵な相手が。
美汐の胸にじわりと寂しさが広がっていく。