このたび、お見合い相手の御曹司と偽装結婚いたします~かりそめ妻のはずが旦那様の溺愛が溢れて止まりません~
日々過密なスケジュールが組まれていて次に顔を合わせられるタイミングを調整するのは難しい。
結局顔合わせの日に双方の秘書を交えての話し合いが行われ、その場で決められることはすべて結論を出し、結婚に向けて一気にことが進んだ。
大我はここでも相変わらずの強引さですぐにでも結婚式を挙げるべきだと主張し、柊の父や紫乃を困らせていた。
この結婚は経済界に少なからずの波紋が広がるはずの、超大企業同士の縁組だ。
事前の根回しが必要で、話を通しておくべき相手が存在するのも確か。
その時間を考えて結婚式は半年後を予定に段取りを組み、ひとまず婚姻届けの提出を済ませることになった。
これで大我も納得するだろうと、誰もが納得したが。
『すぐに一緒に暮らせ』
当人たちの気持ちを完全に無視した大我の更なるひと言で、美汐は早々に柊と暮らすことになった。
あれだけ見合いを嫌がっていた美汐があっさり結婚を承諾したのはいっときの気まぐれかもしれないと勘ぐったのだ。
届けの提出だけでは安心できず、保険をかける意味で一緒に暮らすよう命じたようだ。
相手が誰であれそしてどんな状況でも、自身の気持ちに忠実な大我に美汐は苦笑するしかなかった。
その後両家というより両社と言った方が正しい打ち合わせの場が幾度か設けられ、結婚に向けての本格的な準備が続いている。
美汐は柊との同居の支度を進めながらも、戸惑いを覚えずにはいられなかった。
柊との結婚を決めたことに後悔はないが、偽装結婚だという事実が頭から離れない。
ふたりの結婚を喜ぶ家族たちをだましているようで、後ろめたさもある。
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