家出した野良犬くん×4を拾ったら溺愛生活が幕を開けました。
「・・・ここ?」
そうだよ、と頷いた蓮雅は建物を見上げる。
「・・・コトリ幼稚園?」
「そう。私がお世話になった幼稚園。よく遊びに来てるの」
ふぅん・・・と頷いていると、蓮雅は門をくぐり、玄関で靴を脱いで職員室に入った。
気の札に、丸っこい平仮名で書かれた『しょくいんしつ』。
「失礼しま~す」
「あら、蓮ちゃん!いらっしゃい、お菓子持ってきてくれたの?」
胸に『園長』の札を付ける年配の女がニコニコしながら蓮雅に訊き、蓮雅は大きく頷いた。
「はい、最近来れてなかったので!行っていいですか?」
「もちろんよ」
園長は快く了承し、蓮雅は階段を上っていった。
「ココの幼稚園ね、それぞれの学年で1クラスしかないの、だからお菓子も全員分持ってくるんだよ」
蓮雅は楽しそうに笑い、『あかぐみ』と書かれた札のたれる教室に入った。
「ん?蓮姉!来たの!!・・・そいつだれ」
最初に短髪の男が駆け寄ってきて、蓮雅がそれを受け止める。
蓮雅に対する声は甘いのに、俺を見たとたん声が低くなった。
猫被ってるんだ・・・年少なのに。
「久しぶりだね、(はる)くん。お菓子持ってきたよ。みんなも並んでね」
蓮雅に声を掛けられ、チビはすぐに一列になった。
なんなの・・・犬じゃん。
「この人は私のお友達の添伽。えっと・・・添兄(てんにい)だよ」
「やだー!この人嫌いっ!」
「私もヤダ!この人蓮姉のこと取るー!」
「ハゲ爺!こいつハゲ爺ー!!」
悠と言うらしいチビがそう言い、蓮雅は苦笑した。
「悠くん、ハゲってどんな人かわかる?」
優しく聞く蓮雅に、悠は自信満々に答えた。
「頭がない人でしょ?」
・・・は。
頭じゃなくて髪だし、ハゲにないのは。
「じゃあお兄ちゃんでいいよ、はい、お菓子配るよー」
蓮雅は気を取り直して菓子を配り始めた。
「ののくんはこれね、アヤちゃんはこれ。あっくんはこれだよ」
菓子を渡されたチビがみんな喜んでるところを見る限り、蓮雅は全員の好きな菓子を把握してるみたいだった。
「じゃあみんなで仲良く食べてね。食べれないお菓子が配られた子は言ってねー?」
『ないよー!』
チビの声が重なり、蓮雅は嬉しそうに『あかぐみ』を出て行った。
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