死神×少女+2【続編】
亜矢には色々な疑問が浮かんだ。

「でもそれ、魔王がいない時に起きたら、どうするの?」

魔王は教師なので、朝から夕方までは学校にいる。
その間、アヤメは家でコランと二人きりのはず。
ここまで考えて、亜矢は気付いた。

「ま、まさか……?」
「はい。コランがいますから」

なんとアヤメは『つわり』が起きたら、コランに『チュー』をして凌いでいたのだ。
キスの相手が誰でも良いという訳ではない。
コランは魔王の血を受け継いでいて、容姿もそっくりだ。
まぁ、親子だし…それなら微笑ましいのかもしれない。
そういえば最近、コランは妙に亜矢にチューをせがんでくる。
急にマセてきたのは、これが原因だったのか……。
噂をすれば、寝室で昼寝していたコランが起きてきて、リビングへやってきた。

「あ!アヤだ!おかえり~~!!」

コランは亜矢の姿を見ると、一目散に駆け寄って腰に抱きつく。
やっぱり、コランは可愛い。亜矢は一気に癒された。

「さて、と……魔王」

亜矢は、さっきから黙っている魔王の方を向いた。
まぁ、亜矢が黙ってろと言ったのだが。

「なんだ、泊まるか?ベッドは1つしかねぇぞ、クク…」
「そんな事より、なんでアヤメさんに制服を着せてるのよ」
「あぁ、今日は制服だなぁ」
「今日は…って魔王、もしかして……」

信じたくもないが、もしや…もしや魔王は、制服だけでなく……
高校の体操着やジャージも所有しているのでは!?
聞けば聞くほど恐ろしい真実を知る事になるので、これ以上はやめた。
だが、この魔王に何か一矢報いないと亜矢は気が済まない。
亜矢は屈んで、コランに耳打ちした。

「コランくん、お願い。魔王を『父ちゃん』って呼んで」
「うん!アヤのお願いなら、いいぜ!!」

「そ、それは……ヤメロ……」

それが聞こえたのか、魔王の顔色が一気に青ざめた。
これは珍しい反応だ。

「父ちゃーん!!」
「クゥッ……その呼び方、やめろ!!この、ガキがぁ……!!」

魔王の唯一の弱点は、息子のコランに『父ちゃん』と呼ばれる事なのだ。
恐らく我慢できないほどに、むず痒いのだろう。
効果は抜群、魔王の弱みを握ったも同然。
亜矢は晴れ晴れとした顏で、コランと一緒に魔王家を後にした。

(あれ…?何か聞き忘れたような……)

そう。亜矢は、重要な事を1つ聞き忘れていた。
アヤメが言っていた『亜矢にも影響が出るかもしれない』という言葉。
その意味とは……?



その時の亜矢は、これから自分の身に起こる『何か』を知るよしもなかった。
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