死神×少女+2【続編】
そういえば天王は、リョウにも『禁忌の儀式』である呪縛を使ったが、自身が代償を受けた様子はなかった。
苦しんでいたのは、リョウばかりで……。おそらく代償を受けたのもリョウなのだ。
同じく『禁忌の儀式』を行ったグリアも魔王も、自身が代償を受けたというのに。
……神とはいえ、なんかズルい。反則ではないだろうか。
リョウが、亜矢の複雑な心境を察するが、何も言えずに苦笑いしている。

「あの……なんか、あたし、納得できないんですけど」
「春野さんとアヤメ妃は同一の魂を共有し、シンクロしている。これは避けられない代償だ」

この二人も、なんだか会話が噛み合っていない。
つまり、アヤメの『つわり』が治まるまで、亜矢にも同様の症状が起こるのだ。
神である天王を前に、怒りを爆発させる訳にもいかない。

要は、アヤメが落ち着く時期まで我慢すれば良いのだ。我慢すれば……
我慢なんて、慣れているはず。

自分よりも他人を優先する亜矢は、そう自分に言い聞かせて納得するしかなかった。




その、次の日。
亜矢がモヤモヤとした1日を過ごしていた、その日。
アヤメが突然、マンションの亜矢の部屋を訪ねてきた。
玄関先で、アヤメは亜矢と向かい合い、こう告げた。

「私、しばらく魔界に帰ります」

「…………え?」

突然の事に、亜矢は思考が追いつかない。
アヤメの言葉は、まるで「実家に帰らせて頂きます」みたいなノリだ。
まさか、魔王とケンカでもしたのだろうか?別居?離婚の危機!?
アヤメが出産を控えた、こんな大事な時に……。


それと同時刻、グリアもある決意を胸に、このマンションから出発しようとしていた。
亜矢の懐妊の件についての真実を知る間もないままで……。


亜矢に、2つの『別れ』が迫っていた。
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