死神×少女+2【続編】
その時、天王が何かに気付き、席を立った。
そのまま一人で席を離れていく天王を、リョウはポカンとして見つめていた。
すると、天王と入れ替わるようにして、一人の少女がリョウのテーブルの前に現れた。

「あれ?リョウくん!すごい偶然~!」
秋谷(あきや)さん……?」

その少女はクラスメイトであり、亜矢の親友・美保だ。
ツインテールの長い髪に、ピンクのワンピース。見た目からも女子力が高く、可愛らしい。
シュークリームの乗ったトレーを持ち、美保は明るい笑顔でリョウに迫る。

「ねえねえ、さっきの人って、リョウくんのお父さん?」
「え?いや、マンションの大家さんだよ」

……嘘は言っていない。
しかし、見た目は20代の天王を、どう見たらリョウの父だと思うのか。
美保は以前、初めてコランを見た時に、亜矢の子供だと勘違いした事もある。
感覚と発想が独特なのだ。

「私、ここに座ってもいいかしら~?」
「あ、うん」

相変わらず積極的な美保に押される形で、リョウは思わず頷いた。
そして美保は、さっきまで天王が座っていた、リョウの正面の席に座る。

「ふふ、最近のリョウくん、よく笑うよね。良かった~」
「え?」
「以前のリョウくんって、辛そうな顔をしてる時が多かったから」
「そうだっけ?それって、いつ?」
「んーと……、一年前くらい」

その時は、リョウが呪縛で苦しんでいた時だ。
それにしても、美保はリョウの事をよく見ている。
それだけリョウに対して本気なのだが、それを言葉で直接伝えた事はない。
態度では、思いっきりアピールしているが……。

「……よく見てるね」
「見るわよ、リョウくん素敵だもの~」
「ボクの、どこがいいの?」
「全部、魅力的よ!リョウくん、モテるのに気付かないなんて~!」

こんなに素直で真直ぐに好意を向けてくるなんて……。
ある意味、グリアに対してツンデレな亜矢とは逆のタイプだ。

「秋谷さん……」
「あ、『美保』って呼んで!亜矢の事も名前で呼んでるでしょ!」
「……美保ちゃんも、シュークリーム好きなの?」
「うん!大好きよ!」
「じゃあ、おススメのお店、他にも知ってるから、一緒に行く?」
「本当!?行く!嬉しい~!!」

美保が嬉しいのはシュークリームではなく、リョウから誘われたからだ。




天使でありながら、未来の『天王』になるかもしれない、リョウ。
だが今はまだ、普通の高校生として、人間界で暮らしてみるのも良いと思っている。
大切な友、大切な人が、この世界にいるのだから。




果たして、優秀なる天使、リョウの未来とは……?
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