死神×少女+2【続編】
そうして、無事に人間界へと帰る事が出来た亜矢。
魔界でのパーティーは、まるで夢のような時間だった。
だが、どんな夢でもいつかは覚めるし、どんな魔法もいつかは解ける。
一晩眠ればまた、いつもの朝が訪れる。
亜矢は大きなあくびをしながら、学校への道のりを歩いていた。

(そういえば、靴を片方落としてきちゃったわ…。気に入ってたんだけどなあ…)

そんな事を思いながら、高校の校門まで辿り着いた時。
校門の横に、魔王が立っていた。
昨日とは別の顔をした、魔界の王が。

「よお、今日は遅刻しなかったな」

笑いながら言う魔王。亜矢は、わざとらしく軽く頭を下げる。

「おはようございます、魔王先生」

そう言って、再び顔を上げた時。
亜矢の目の前に、差し出された魔王の手。
その手には、亜矢が昨日落とした、まだ新しいお気に入りの靴の片方があった。

「これは、ご褒美だ」

亜矢は魔王を見上げる。
朝日が目に入って、魔王の顔が眩しく見える。

「落としモノだぜ、お姫サマ」

亜矢は、思わず笑った。
その場で顔を見合わせたまま、二人は意味もなく笑い続けた。






愛しいお姫サマを自分の腕の中で抱けるのは、12時までの一瞬の魔法。
壊れやすいのに、決して壊したくない。
扱いが難しいのに、どうしても触れてみたくなる。
魔王が手にしたのは、片方だけのガラスの靴。
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