死神×少女+2【続編】
マンションの自室へと帰りつくと、部屋ではグリアが不機嫌極まりない顔をして座りこんでいた。

「あら死神、来てたの」

亜矢はグリアを見ると、特に驚く様子もなく言った。
グリアが勝手に部屋に上がりこむのはいつもの事なので、怒りという感情はとうの昔に通り越したのだ。
どうせまた、夕飯をたかりに来たのだろう。

「遅えんだよ!どこほっつき歩いてやがった」

偉そうに、まるで亭主のような言いっぷりだ。
コランはパタパタと小走りでグリアに近寄った。

「アヤとデートしてたんだぜ!!」

コランがニッコリと笑いながら、堂々という。

「ああ?何言ってんだ、ガキが」

空腹の為に不機嫌なグリアは、コランを相手にしない。
今日の出来事を、グリアは知らないのだ。

「オレ、ガキじゃないー!!」

コランがムっとして言い返す。

「もう、ケンカしないの!すぐに夕飯作るから、待ってて」

子供のケンカをなだめるように亜矢は軽く一喝するとキッチンへ向かう。
だが、そんな亜矢の片腕をグリアが強い力で掴んだ。

「なによ?」

亜矢が振り向くと、目の前には綺麗すぎる死神の顔が間近に迫っていた。

「腹も減ってるが……その前に、口移しだ」
「えっ…ちょっと、やめてよ!」

迫り来るグリアに、亜矢は顔を赤らめながらも抵抗する。
目の前にコランもいるというのに。
いつも、状況を構わず口移しをしてくるこの死神に腹を立てながらも、完全に抵抗出来ない立場にあるのが悔しいというか、悲しい。
だが、そんな二人を見て何を思ったのか、なんとコランは走り寄ってきたのだ。

「死神の兄ちゃん、ずるいー!!オレもアヤに口移しする!!」
「えっ!?コランくん!?」

どうやら、今日一日の出来事でコランの中で何かが目覚めたようだ。
ついでに言うなら、グリアのせいで『口移し』という言葉を覚えてしまったらしい。
ただ、コランは『口付け』と『口移し』の違いと意味を分かってはいないだろうが。

「なんだ?ガキは引っ込んでな!!」
「ガキじゃないってばー!!アヤ、オレが先だ!オレが先!」
「ちょっ…!もう、いい加減にしてよ、二人とも!!」

さすがの亜矢も、こうなっては事態を収めるのが大変だ。






『契約』にこめられた、小悪魔の願い。
『口移し』にこめられた、死神の野望。
完成したはずの亜矢の『魂の器』ではあるが、二人分のそれを受け止めるには………
器がいくつあっても足りなさそうだ。
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