死神×少女+2【続編】
土曜日になって、亜矢はリョウの部屋を訪れた。
「亜矢ちゃん、いらっしゃい」
玄関のドアを開けたリョウは、いつもの笑顔で亜矢を部屋へと迎え入れる。
一見、いつもと変わらないリョウなのだが、『あの日』からリョウは大きく変わった。
グリアとリョウが敵対する事になった、『あの日』から。
「ねえ、リョウくん。死神と…何かあったの?」
亜矢が問いかけても、それには答えずリョウはいつもの笑顔で全く別の話をする。
「亜矢ちゃん、今度は何を一緒に作ろうか?ケーキがいいかな」
亜矢は心で溜め息をつく。
(やっぱり、何も話してはくれないのね)
ふと、亜矢はリョウを見て何か違和感を感じた。
「リョウくん、最近はよく黒い色の服を着てるのね?」
「………似合わないかな?」
「ううん、そういう訳じゃないの!」
やっぱり、以前のリョウとはちょっと雰囲気が違う気がする。
今までのリョウは、どちらかと言えば白や青の服を好むイメージがあった。
彼は天使だから、そのイメージが強いせいかもしれないが。
さらに、亜矢はある物に気付いた。
「リョウくん、ペンダントしてるのね」
リョウの胸元には、金色の十字架の中心に黒い宝石が施された小さなペンダントがあった。
リョウは、そのペンダントを片手で軽く握った。
その瞬間、スっとリョウの表情が変わった。
「………これは、天王様より与えられた、忠誠の証だよ」
そのリョウの表情の変化に、亜矢は息を呑んだ。
最近のリョウは時々、ふとしたきっかけにより、まるで人が変わったかのような表情を見せる。
それは一瞬なのだが、全てが負の感情で出来たようなとても冷たい眼。
「リョウくん、それって…どういう事?」
だが、亜矢が問いただすべきなのは、そこではない。
「リョウくん、天界にはもう仕えないって言ったじゃない。どうして!?」
リョウは少しも動じる様子を見せない。
「天王って、リョウくんをずっと苦しめていた人なんでしょ!?」
亜矢がいくつもの言葉を投げかけるが、リョウは答えない。
感情的になった亜矢は、今まで抑えてきた言葉を口にしてしまった。
「………あたしの魂を奪おうとした人なんでしょ!!」
亜矢は、言ってから自分の口にした言葉を自覚したが、もう遅い。
気まずそうにしてリョウの顔を見たが、リョウはふっと微笑んだ。
え?と亜矢が思った次には、リョウは両腕を伸ばしていて、亜矢の身体がそれに包まれた。
リョウが、亜矢を抱きしめた。
「リョウ……くん………?」
亜矢の声には、驚きと戸惑いが混じっている。
リョウは亜矢を抱いたまま、目を伏せた。
まるで、大切なものを両腕に包むようにして。
「大丈夫………。亜矢ちゃんは、ボクが守るから」
いつものリョウの口からは出ないような言葉と行動。
だが、今は何故かそれすらも不思議とは思わない。
リョウの力に押されるまま、気付くと亜矢の身体はベッドに倒されていた。
リョウは亜矢の顔を覗くようにして顔を近付け、仰向けの亜矢を見下ろした。
「亜矢ちゃん、ボクが男だって自覚してる?」
亜矢は眼を見開くが、目の前に映るリョウの瞳から少しも目をそらせなかった。
「ボクが君を帰さないって言ったら、どうする?」
リョウは、片手で亜矢の頬にそっと触れた。
愛おしい物に触れているように、手の平で優しく撫でた。
瞬きもせず、亜矢は小さく口を開いた。
「リョウくん………何言って…………どうしたの?」
いつもらしくないリョウの言葉も、その行動も。
心が自然と受け入れてしまう。逆に言えば、拒めない。
これも、天使の特性なのだろうか?
その時、亜矢はここでもグリアの言葉を思い出した。
『リョウには気を許すな、惑わされるな』
というグリアの言葉を。
亜矢は僅かに自分を取り戻し、再び問いかけた。
「リョウくん、どうして死神とケンカしたの?」
グリアの名を聞くと、それに反応してリョウは亜矢の身体から静かに離れた。
そして、睨みつけるかのように目を細めると、冷たく言い放った。
「グリアは、ボクの敵だ」
亜矢がゾクリとする程、冷たい眼だった。
そこにあるのは、憎しみと言った負の感情のみ。
そんな彼を見て、リョウは変わってしまった事を亜矢は確信した。
だが、亜矢は真実を知らない。
リョウの心が天王の手によって闇に堕ち、黒衣を纏う堕天使になってしまった事を。
「亜矢ちゃん、いらっしゃい」
玄関のドアを開けたリョウは、いつもの笑顔で亜矢を部屋へと迎え入れる。
一見、いつもと変わらないリョウなのだが、『あの日』からリョウは大きく変わった。
グリアとリョウが敵対する事になった、『あの日』から。
「ねえ、リョウくん。死神と…何かあったの?」
亜矢が問いかけても、それには答えずリョウはいつもの笑顔で全く別の話をする。
「亜矢ちゃん、今度は何を一緒に作ろうか?ケーキがいいかな」
亜矢は心で溜め息をつく。
(やっぱり、何も話してはくれないのね)
ふと、亜矢はリョウを見て何か違和感を感じた。
「リョウくん、最近はよく黒い色の服を着てるのね?」
「………似合わないかな?」
「ううん、そういう訳じゃないの!」
やっぱり、以前のリョウとはちょっと雰囲気が違う気がする。
今までのリョウは、どちらかと言えば白や青の服を好むイメージがあった。
彼は天使だから、そのイメージが強いせいかもしれないが。
さらに、亜矢はある物に気付いた。
「リョウくん、ペンダントしてるのね」
リョウの胸元には、金色の十字架の中心に黒い宝石が施された小さなペンダントがあった。
リョウは、そのペンダントを片手で軽く握った。
その瞬間、スっとリョウの表情が変わった。
「………これは、天王様より与えられた、忠誠の証だよ」
そのリョウの表情の変化に、亜矢は息を呑んだ。
最近のリョウは時々、ふとしたきっかけにより、まるで人が変わったかのような表情を見せる。
それは一瞬なのだが、全てが負の感情で出来たようなとても冷たい眼。
「リョウくん、それって…どういう事?」
だが、亜矢が問いただすべきなのは、そこではない。
「リョウくん、天界にはもう仕えないって言ったじゃない。どうして!?」
リョウは少しも動じる様子を見せない。
「天王って、リョウくんをずっと苦しめていた人なんでしょ!?」
亜矢がいくつもの言葉を投げかけるが、リョウは答えない。
感情的になった亜矢は、今まで抑えてきた言葉を口にしてしまった。
「………あたしの魂を奪おうとした人なんでしょ!!」
亜矢は、言ってから自分の口にした言葉を自覚したが、もう遅い。
気まずそうにしてリョウの顔を見たが、リョウはふっと微笑んだ。
え?と亜矢が思った次には、リョウは両腕を伸ばしていて、亜矢の身体がそれに包まれた。
リョウが、亜矢を抱きしめた。
「リョウ……くん………?」
亜矢の声には、驚きと戸惑いが混じっている。
リョウは亜矢を抱いたまま、目を伏せた。
まるで、大切なものを両腕に包むようにして。
「大丈夫………。亜矢ちゃんは、ボクが守るから」
いつものリョウの口からは出ないような言葉と行動。
だが、今は何故かそれすらも不思議とは思わない。
リョウの力に押されるまま、気付くと亜矢の身体はベッドに倒されていた。
リョウは亜矢の顔を覗くようにして顔を近付け、仰向けの亜矢を見下ろした。
「亜矢ちゃん、ボクが男だって自覚してる?」
亜矢は眼を見開くが、目の前に映るリョウの瞳から少しも目をそらせなかった。
「ボクが君を帰さないって言ったら、どうする?」
リョウは、片手で亜矢の頬にそっと触れた。
愛おしい物に触れているように、手の平で優しく撫でた。
瞬きもせず、亜矢は小さく口を開いた。
「リョウくん………何言って…………どうしたの?」
いつもらしくないリョウの言葉も、その行動も。
心が自然と受け入れてしまう。逆に言えば、拒めない。
これも、天使の特性なのだろうか?
その時、亜矢はここでもグリアの言葉を思い出した。
『リョウには気を許すな、惑わされるな』
というグリアの言葉を。
亜矢は僅かに自分を取り戻し、再び問いかけた。
「リョウくん、どうして死神とケンカしたの?」
グリアの名を聞くと、それに反応してリョウは亜矢の身体から静かに離れた。
そして、睨みつけるかのように目を細めると、冷たく言い放った。
「グリアは、ボクの敵だ」
亜矢がゾクリとする程、冷たい眼だった。
そこにあるのは、憎しみと言った負の感情のみ。
そんな彼を見て、リョウは変わってしまった事を亜矢は確信した。
だが、亜矢は真実を知らない。
リョウの心が天王の手によって闇に堕ち、黒衣を纏う堕天使になってしまった事を。