死神×少女+2【続編】
グリアが突然、その手に『死神の鎌』を出現させた。
「死神?」
亜矢が不安そうに言うが、構わずグリアは歩き出した。
そして、リョウに向かって鎌の柄を向けて差し出したのだ。
「貸してやる。決着は、てめえの手で付けろ」
リョウは一瞬何かを考えたが、やがて決意してその鎌を受け取った。
グリアはそのまま、一歩下がった。
「天王を斬るか、オレ様を斬るか。てめえで決めろ」
グリアのその言葉に反応したのは、亜矢だった。
「なんで、そんな事!?ダメよっ!!」
だが、亜矢の叫びはグリアにもリョウにも届かなかった。
リョウは鎌を力強く握りしめたまま、白銀色に光るその刃を見つめていた。
リョウは玉座に座る天王と、背後に立つグリアの中間に位置する場所に立っている。
「ねえ、なんで!?なんで誰も止めないのよ!?」
亜矢は必死になって周りの者達に訴える。
だが、魔王もディアも答えず、ただ成り行きを傍観しているだけだ。
コランは魔王の背後に隠れるようにしてギュっと魔王の服を握りしめている。
「やめて、お願い!!リョウくん、やめて!!」
悲痛なまでの亜矢の叫びが、リョウの心に響いた。
だがリョウには、振り返る事も、後戻りも出来ない。
亜矢の優しさが、今もリョウの心を動かす。
亜矢は、知っていたのだ。
リョウが、どちらかを選ぶ事なんて出来ないという事を。
誰かを犠牲にする選択なんて、決して出来ない。
そう、彼は優しいから―――。
そんな彼が選ぶとしたら、それは……。
リョウは鎌を自分の頭上で振り上げた。
そして、自分の背中に刃を回したのだ。
「!!」
亜矢が息を止める。
リョウは顔を上げ、その決意を力強く口にした。
「ボクが天使である為に、運命に縛られるというのなら……」
背中に回した刃が、振り落とされた。
亜矢の潤んだ瞳に、飛び散るいくつもの銀色の羽根が映った。
「ボクは、天使である事をやめる」
左右に軌道を描きながら、いくつもの羽根は次々と地へと舞い落ちていく。
リョウは、鎌で自分の背中の羽根を根から全て切り落としたのだ。
自由に空を飛ぶ事の出来る、天使の羽根。
だがリョウは、最初から自由に飛べる翼なんて持っていなかった。
天使である証の羽根を持つ為に自由を失い、天使としての運命に捕われる。
リョウは自らの手で、運命を断ち切ったのだ。
呆然とする亜矢の隣で、魔王が低く呟いた。
「あの天使……思い切った事をしやがる」
亜矢が、え?と魔王を見る。
「魔王、どういう事?」
亜矢がリョウの方に視線を戻すと、舞い散る羽根と共に地に倒れ行くリョウの姿。
「リョウくん!?」
叫ぶ亜矢の背後で、魔王が静かに疑問の答えを口にする。
「羽根を失う事は、天使にとっては『死』だ」
亜矢は何かを思うよりも先に、リョウに向かって駆け出した。
「いやぁっ!!リョウくんっ!!」
それと同時に、今まで一切の感情を出さなかった天王が玉座から立ち上がった。
「リョウ!!」
天王の声はリョウに届く事はなく、虚しくも虚空に消えた。
さすがに天王も、この展開は読めなかったのだろう。
グリアは拳を強く握った。
何かを必死に抑えているようだが、歯を食いしばり、動きはしない。
コランは目を潤ませながら、魔王の服を小さな手でギュっと握りしめた。
「兄ちゃん……」
魔王は、片手でコランを抱き上げた。
コランは、ぎゅっと魔王に抱きついた。
亜矢はリョウの側に駆け寄ると、床に倒れたリョウの身体を抱き起こした。
「リョウくん、なんで…こんな事……!!」
亜矢の瞳から次々と涙が流れ、こぼれ落ちる。
リョウは薄く目を開けると、力なく微笑んだ。
「……ごめんね。また泣かせちゃったね……」
亜矢は顔を横に振った。涙がさらに落ちていく。
リョウの目の前に映る、愛しい少女の姿。
こんなにも今、近くにいるのに。
でも、もう自分は亜矢に触れる事すら出来ない。
亜矢の涙を拭おうと、リョウは亜矢の頬に手を伸ばしたが………
砂のように消滅していくリョウの手では、すでに亜矢に触れる事は出来ず、すり抜けた。
最後にリョウはもう一度笑った。
「それでも、嬉しいな……ボクの為に泣いてくれるなんて………」
天使にとっての『死』である消滅を選んだ天使・リョウは、亜矢の腕の中で音もなくその存在を消した。
「死神?」
亜矢が不安そうに言うが、構わずグリアは歩き出した。
そして、リョウに向かって鎌の柄を向けて差し出したのだ。
「貸してやる。決着は、てめえの手で付けろ」
リョウは一瞬何かを考えたが、やがて決意してその鎌を受け取った。
グリアはそのまま、一歩下がった。
「天王を斬るか、オレ様を斬るか。てめえで決めろ」
グリアのその言葉に反応したのは、亜矢だった。
「なんで、そんな事!?ダメよっ!!」
だが、亜矢の叫びはグリアにもリョウにも届かなかった。
リョウは鎌を力強く握りしめたまま、白銀色に光るその刃を見つめていた。
リョウは玉座に座る天王と、背後に立つグリアの中間に位置する場所に立っている。
「ねえ、なんで!?なんで誰も止めないのよ!?」
亜矢は必死になって周りの者達に訴える。
だが、魔王もディアも答えず、ただ成り行きを傍観しているだけだ。
コランは魔王の背後に隠れるようにしてギュっと魔王の服を握りしめている。
「やめて、お願い!!リョウくん、やめて!!」
悲痛なまでの亜矢の叫びが、リョウの心に響いた。
だがリョウには、振り返る事も、後戻りも出来ない。
亜矢の優しさが、今もリョウの心を動かす。
亜矢は、知っていたのだ。
リョウが、どちらかを選ぶ事なんて出来ないという事を。
誰かを犠牲にする選択なんて、決して出来ない。
そう、彼は優しいから―――。
そんな彼が選ぶとしたら、それは……。
リョウは鎌を自分の頭上で振り上げた。
そして、自分の背中に刃を回したのだ。
「!!」
亜矢が息を止める。
リョウは顔を上げ、その決意を力強く口にした。
「ボクが天使である為に、運命に縛られるというのなら……」
背中に回した刃が、振り落とされた。
亜矢の潤んだ瞳に、飛び散るいくつもの銀色の羽根が映った。
「ボクは、天使である事をやめる」
左右に軌道を描きながら、いくつもの羽根は次々と地へと舞い落ちていく。
リョウは、鎌で自分の背中の羽根を根から全て切り落としたのだ。
自由に空を飛ぶ事の出来る、天使の羽根。
だがリョウは、最初から自由に飛べる翼なんて持っていなかった。
天使である証の羽根を持つ為に自由を失い、天使としての運命に捕われる。
リョウは自らの手で、運命を断ち切ったのだ。
呆然とする亜矢の隣で、魔王が低く呟いた。
「あの天使……思い切った事をしやがる」
亜矢が、え?と魔王を見る。
「魔王、どういう事?」
亜矢がリョウの方に視線を戻すと、舞い散る羽根と共に地に倒れ行くリョウの姿。
「リョウくん!?」
叫ぶ亜矢の背後で、魔王が静かに疑問の答えを口にする。
「羽根を失う事は、天使にとっては『死』だ」
亜矢は何かを思うよりも先に、リョウに向かって駆け出した。
「いやぁっ!!リョウくんっ!!」
それと同時に、今まで一切の感情を出さなかった天王が玉座から立ち上がった。
「リョウ!!」
天王の声はリョウに届く事はなく、虚しくも虚空に消えた。
さすがに天王も、この展開は読めなかったのだろう。
グリアは拳を強く握った。
何かを必死に抑えているようだが、歯を食いしばり、動きはしない。
コランは目を潤ませながら、魔王の服を小さな手でギュっと握りしめた。
「兄ちゃん……」
魔王は、片手でコランを抱き上げた。
コランは、ぎゅっと魔王に抱きついた。
亜矢はリョウの側に駆け寄ると、床に倒れたリョウの身体を抱き起こした。
「リョウくん、なんで…こんな事……!!」
亜矢の瞳から次々と涙が流れ、こぼれ落ちる。
リョウは薄く目を開けると、力なく微笑んだ。
「……ごめんね。また泣かせちゃったね……」
亜矢は顔を横に振った。涙がさらに落ちていく。
リョウの目の前に映る、愛しい少女の姿。
こんなにも今、近くにいるのに。
でも、もう自分は亜矢に触れる事すら出来ない。
亜矢の涙を拭おうと、リョウは亜矢の頬に手を伸ばしたが………
砂のように消滅していくリョウの手では、すでに亜矢に触れる事は出来ず、すり抜けた。
最後にリョウはもう一度笑った。
「それでも、嬉しいな……ボクの為に泣いてくれるなんて………」
天使にとっての『死』である消滅を選んだ天使・リョウは、亜矢の腕の中で音もなくその存在を消した。