死神×少女+2【続編】
本当に、本当にリョウくんなのだろうか?
触れたら、消えてしまわないだろうか…?
そのくらい静かに佇むリョウの存在が、儚いものに思えた。
だが亜矢の心配を拭うかのように、先にリョウが先に亜矢に両手を伸ばし、触れてきた。
そして……その両腕で、大切なものを包みこむように、亜矢の体を抱きしめた。
「亜矢ちゃん、ごめんね……」
その優しく囁く声に、亜矢の眼には一杯の涙が溢れ、瞳からポロポロと零れ落ちていく。
悲しい訳ではない。とにかく嬉しかった。
「リョウくん、生きてる……良かった……」
亜矢はリョウの温かさを全身で感じたくて、強く抱き返した。
リョウは一瞬、照れたような表情を見せた後、亜矢を少しだけ体から離し、顔を向かい合わせた。
リョウが亜矢に謝ったのは、今までの『感謝』よりも『謝罪』よりも、何よりに先に、これから言う言葉に対しての事。
きっとそれは、亜矢を困らせるだろうから。
それでも、全てから解放された今こそ、この想いを、ここで伝えたいと思った。
「ずっと、亜矢ちゃんの事が好きだった。今も、これからも、ずっと…ボクの愛しい人だよ」
亜矢の瞳から、また新しく別の涙が溢れ出る。
リョウの純粋な想いに、何と言って返せばいいのだろう。
言葉は出なくて、涙ばかりが出てくる。
しかし、リョウは少し困った顔をして笑い返した。
亜矢が答えを出せない事は解っていた。最初から、答えなど望んでいなかった。
伝えられれば、それでいい。
身勝手で一方的な想いだと解っていながら口にした事は、自分が背負うべき罪でしかない。
「ごめんね……困らせて」
「リョウくん、謝ってばかり……」
リョウは改めて、亜矢に顔を向かい合わせる。
リョウの水色の瞳は息を呑むほど綺麗で、曇りのない…今、目の前に広がる、この空の色を映し出しているかのようだ。
亜矢の瞳を見つめたまま、リョウはそっと唇を近付ける。
だが、亜矢の唇には、決して触れる事は出来ない。許される理由もない。
だから、せめて――――これだけは、神も…死神すらも……許して欲しいと願いながら。
リョウは、亜矢の額に、そっとキスを落とした。
触れるか触れないかくらいの、儚い触れ合いだった。
そうして、ようやく二人は離れて、亜矢の涙が落ち着くのを待つと、リョウはいつもの笑顔を向けた。
「心配かけてごめんね。この通り、ボクはもう大丈夫だから」
「本当に良かった…。でも、天王…天真さんは、大丈夫なの?」
「天王様は、謝罪してくれたよ。心を入れ替えると誓うって。だからボクは今後も、天王様の側にいるつもりだよ。……今度こそ大丈夫だから」
「うん。リョウくんがそう決めたのなら、あたしも信じる」
確かに、天王はリョウを蘇らせてくれた。こうやって、いつものリョウと再会させてくれた。
例え、今までが間違った形だったとしても、天王はリョウの事を大切に思っているのは確かなのだ。
例え、あの呪縛がなくとも、リョウは天王から離れる事は決して望んでいなかった。
死神と天使に絆が生まれたように、そこには断ち切れない天王と天使の絆があるのだと思える。
ふと、亜矢の視界に入った屋上の入口付近に、人影を見付けた。
たった今、屋上に駆け上がってきたのであろう、息を切らしている、その人物。
それが誰であるか察した亜矢は、リョウから離れると背中を向け、その入口へと歩き出した。
だんだんと、亜矢がその人影に近付いて行く。
そこには、グリアが立っていた。
亜矢がグリアとすれ違う瞬間、彼の口から亜矢に向かって、小さく囁かれた言葉。
「邪魔して悪ぃな」
「やめてよ、あんたらしくない」
亜矢は立ち止まる事なく入口のドアに手をかけ、屋上から立ち去った。
この広い屋上には、リョウとグリアの二人だけになった。
リョウは、少し緊張した面持ちで、自分に歩み寄って来るグリアを見据えた。
何を言われるのだろう。憎まれるのだろうか。
殴られたとしても、仕方が無い。
これまでの行いを思えば、リョウがグリアに対して感じるのは、背徳感しかなかった。
目の前にまで辿り着いたグリアは、そっとリョウに手を伸ばした。
リョウは、覚悟を決めた。
―――――だが。
「………え?」
思わず、リョウの口から声が漏れ出た。
グリアは何も言わず、両腕でリョウの肩を…背中を…静かに抱いたのだ。
リョウの存在を全身で確かめ、その喜びを噛み締めるように。
目に見えない、口では言えない友情を分かち合うように。
言葉なんて、もはや必要なかった。
「グ……リ……ア………」
抑えてきた感情が一気に溢れ出し、リョウの瞳から涙が流れ、頬を伝い落ちる。
言葉で伝える、少女への想い。
言葉では伝えない、友への想い。
断ち切られた死神と天使の絆は、過酷な終着点を経て、ここに繋がった。
触れたら、消えてしまわないだろうか…?
そのくらい静かに佇むリョウの存在が、儚いものに思えた。
だが亜矢の心配を拭うかのように、先にリョウが先に亜矢に両手を伸ばし、触れてきた。
そして……その両腕で、大切なものを包みこむように、亜矢の体を抱きしめた。
「亜矢ちゃん、ごめんね……」
その優しく囁く声に、亜矢の眼には一杯の涙が溢れ、瞳からポロポロと零れ落ちていく。
悲しい訳ではない。とにかく嬉しかった。
「リョウくん、生きてる……良かった……」
亜矢はリョウの温かさを全身で感じたくて、強く抱き返した。
リョウは一瞬、照れたような表情を見せた後、亜矢を少しだけ体から離し、顔を向かい合わせた。
リョウが亜矢に謝ったのは、今までの『感謝』よりも『謝罪』よりも、何よりに先に、これから言う言葉に対しての事。
きっとそれは、亜矢を困らせるだろうから。
それでも、全てから解放された今こそ、この想いを、ここで伝えたいと思った。
「ずっと、亜矢ちゃんの事が好きだった。今も、これからも、ずっと…ボクの愛しい人だよ」
亜矢の瞳から、また新しく別の涙が溢れ出る。
リョウの純粋な想いに、何と言って返せばいいのだろう。
言葉は出なくて、涙ばかりが出てくる。
しかし、リョウは少し困った顔をして笑い返した。
亜矢が答えを出せない事は解っていた。最初から、答えなど望んでいなかった。
伝えられれば、それでいい。
身勝手で一方的な想いだと解っていながら口にした事は、自分が背負うべき罪でしかない。
「ごめんね……困らせて」
「リョウくん、謝ってばかり……」
リョウは改めて、亜矢に顔を向かい合わせる。
リョウの水色の瞳は息を呑むほど綺麗で、曇りのない…今、目の前に広がる、この空の色を映し出しているかのようだ。
亜矢の瞳を見つめたまま、リョウはそっと唇を近付ける。
だが、亜矢の唇には、決して触れる事は出来ない。許される理由もない。
だから、せめて――――これだけは、神も…死神すらも……許して欲しいと願いながら。
リョウは、亜矢の額に、そっとキスを落とした。
触れるか触れないかくらいの、儚い触れ合いだった。
そうして、ようやく二人は離れて、亜矢の涙が落ち着くのを待つと、リョウはいつもの笑顔を向けた。
「心配かけてごめんね。この通り、ボクはもう大丈夫だから」
「本当に良かった…。でも、天王…天真さんは、大丈夫なの?」
「天王様は、謝罪してくれたよ。心を入れ替えると誓うって。だからボクは今後も、天王様の側にいるつもりだよ。……今度こそ大丈夫だから」
「うん。リョウくんがそう決めたのなら、あたしも信じる」
確かに、天王はリョウを蘇らせてくれた。こうやって、いつものリョウと再会させてくれた。
例え、今までが間違った形だったとしても、天王はリョウの事を大切に思っているのは確かなのだ。
例え、あの呪縛がなくとも、リョウは天王から離れる事は決して望んでいなかった。
死神と天使に絆が生まれたように、そこには断ち切れない天王と天使の絆があるのだと思える。
ふと、亜矢の視界に入った屋上の入口付近に、人影を見付けた。
たった今、屋上に駆け上がってきたのであろう、息を切らしている、その人物。
それが誰であるか察した亜矢は、リョウから離れると背中を向け、その入口へと歩き出した。
だんだんと、亜矢がその人影に近付いて行く。
そこには、グリアが立っていた。
亜矢がグリアとすれ違う瞬間、彼の口から亜矢に向かって、小さく囁かれた言葉。
「邪魔して悪ぃな」
「やめてよ、あんたらしくない」
亜矢は立ち止まる事なく入口のドアに手をかけ、屋上から立ち去った。
この広い屋上には、リョウとグリアの二人だけになった。
リョウは、少し緊張した面持ちで、自分に歩み寄って来るグリアを見据えた。
何を言われるのだろう。憎まれるのだろうか。
殴られたとしても、仕方が無い。
これまでの行いを思えば、リョウがグリアに対して感じるのは、背徳感しかなかった。
目の前にまで辿り着いたグリアは、そっとリョウに手を伸ばした。
リョウは、覚悟を決めた。
―――――だが。
「………え?」
思わず、リョウの口から声が漏れ出た。
グリアは何も言わず、両腕でリョウの肩を…背中を…静かに抱いたのだ。
リョウの存在を全身で確かめ、その喜びを噛み締めるように。
目に見えない、口では言えない友情を分かち合うように。
言葉なんて、もはや必要なかった。
「グ……リ……ア………」
抑えてきた感情が一気に溢れ出し、リョウの瞳から涙が流れ、頬を伝い落ちる。
言葉で伝える、少女への想い。
言葉では伝えない、友への想い。
断ち切られた死神と天使の絆は、過酷な終着点を経て、ここに繋がった。