死神×少女+2【続編】
マンションから高校までは、徒歩で行ける距離だ。
必然的に、亜矢と魔王は並んで高校までの道程を歩いていく。
亜矢は、隣を歩く長身の魔王を見上げて笑いかけた。

「魔王、良かったね。アヤメさんと一緒になれて。願いが叶ったね」
「あぁ、そうだな。後は亜矢を手に入れれば、な」
「ん?」

亜矢は聞き間違いかと思って、思わず聞き返した。

(なんで?もう、あたしを妃にする必要は、ないんじゃあ……?)

もう、魔王に迫られたりする事はないと思っていた。
そんな亜矢の疑問すらも、魔王はお見通しだった。

「なぁに『全て解決』みたいな顔してんだよ?あんたがアヤメの転生体なのは変わらねぇだろ」
「そ、それは、そうだけど…」

魔王は早歩きで亜矢の正面に回り、行く手を阻んだ。亜矢は驚いて歩みを止める。
その亜矢の両肩を、魔王が両腕で掴んだ。言い聞かせるように顔を近付け、小声で囁く。

「亜矢の心は誰にも渡さねえ。何度転生しようが、オレ様の虜にしてやる」

亜矢はドキっとして一瞬、呼吸を忘れた。
これは……口説かれている。
魔王の深紅の瞳に引き込まれて、目が逸らせない。
今でも魂の奥底からアヤメが呼応しているのか……
やはり、魔王には愛しさに近い感情を感じる。
いや…これはすでに、アヤメではなく自分自身の感情なのかもしれない。
このままでは、本当に落とされてしまうかもしれない。
魔王はアヤメと再会したが、アヤメの魂と同体の亜矢も手放す気はないのだ。
アヤメとは全く逆の性格、強気で反抗的な亜矢を一人の女として愛したのも、また事実。
その芯の強さと優しさはアヤメと同じ。
魔王は亜矢の中にアヤメの本質を見た。その逆も、また然り。
別々の心のようで本質は同じ。だからこそ惹かれる。
亜矢とアヤメは、切っても切れない存在なのだ。
一人の女としても、アヤメの片割れとしても愛しい存在。
そんな亜矢が自分以外の誰かと結ばれる事など、決して許さない。

「えぇ、えっと……それって、浮気にならないの?」
「あぁ?何言ってんだよ。同じ魂を愛して浮気になるかよ」
「んん??」

もう亜矢は、訳が分からなくなってきた。
何が解決で何が問題なのか、この状況が理解不能だ。
結局、魔王は、これからも変わらずに亜矢を口説き続けるのだろう。
………アヤメという愛する妻がいるのに。
魔王の恋愛対象が二人になっただけのような……。
いや、同一人物だから変わらない……?
何とも不毛で奇妙な恋愛関係を築いた結果になってしまった。

(まぁ、魔王が幸せなら、それでいい……のかな?)

自分よりも他人を優先する亜矢は、己の苦労も顧みずに納得する事にした。
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