BARでエンジェルキッスをくれた貴方は老舗呉服店の御曹司でした〜カクテル言葉はあなたに見惚れて〜
もう一度煙草をくわえると煙をはきながら灰皿に煙草を押し付けると、フッとあの人は姫乃の方を見て口角を上げた。
そして喫煙所から姫乃に向かって人差し指でクイクイと呼んだのだ。
それから喫煙所から出てカウンター席に戻って行ったのだ。
姫乃は引き寄せられるように椅子から立ち、カウンターの彼の隣に座った。
「失礼…します」
姫乃は恥ずかしくて顔を合わせられない。
「ぶつかったおわびに奢る、何がいい?」
「あ、いえ、私こそハンカチを拾ってもらったお礼をさせてください」
低音の声がとてもあっている。
「女には奢られたくない、黙って奢られろ」
「あ、はい」
姫乃はすぐに返事をしていた。
ぶっきらぼうな言い方も彼に合っていてドキドキしている。
「何でも呑めるか?」
「はい」
さっきまでカクテルとか全然わからなかったのにすぐに返事をしていた。
その時は何でも呑めると思ったのだ。
「彼女にエンジェルキッスを」
「はい」とバーテンダーは返事をした。
エンジェルキッス?姫乃は聞いたことがなかった。
「俺はテキーラ」
テキーラは聞いたことある、強いお酒だ。
「かしこまりました」
20歳は超えてるよな?と年齢確認をされてしまった。
背は低いですけど大丈夫ですと返事をするとまたフッと笑われた。
2人の前にカクテルが置かれるとグラスを持ち上げて乾杯と言った。
「いただきます」と姫乃は言うと可愛いですねとカクテルの見た目を言った。
カカオリキュールに生クリームをフロートさせた2層のカクテルに、カクテルピンに刺したチェリーがグラスにのっているのだ。