BARでエンジェルキッスをくれた貴方は老舗呉服店の御曹司でした〜カクテル言葉はあなたに見惚れて〜
姫乃は汗びっしょりかいている太志にタオルを渡した。
「はぁ…以外に遠かった」
「え?歩いて来たの?」
「駅からな」
姫乃の家は駅近くではないので歩くと30分はかかるだろう。
だから車で通勤しているのだし。
「車だと近いと思ったんだけどな…運動不足だ」
「太志さん、お酒呑んでる?」
「あぁ、今日は地区の集まりがあって…」
地区の集まりって、それなら家に近いんじゃ…地区ってそうだよね
「家に帰らなかったの?」
「帰りたくなかった」
「それなら連絡をくれたら車で迎えに行ったのに」
「あー連絡な……」
《どうして試験終わってから連絡してくれなかったの?》
そのひと言が言えなかった。
何か責めてる感じがして…
「スマホを落とした」
「え?ど、どこで?」
「東京……試験受けに行った時に」
少し酔っている太志は少しずつ話してくれた。
夏休みで人が凄く多かったこと。
電車の中もたくさんの人でいつも後ろポケットにスマホをひょいと入れる太志は全然落としたことに気づかなかったらしい。
駅と近くの交番に届けを出して急いで試験会場に向かったということだった。