BARでエンジェルキッスをくれた貴方は老舗呉服店の御曹司でした〜カクテル言葉はあなたに見惚れて〜
太志は今日は車でやってきた。
パソコンという荷物もあったし。
「俺……女と旅行初めてかも」
「嘘だぁ、私でも…あっ…」
姫乃は慌てて口を塞いだ。
ふーんと太志さんにちらっと見られたが昔の事だからそんなにヤキモチを妬いている様子はなかった。
「マジだよ、そもそも長い時間一緒に居れないんだよ」
「何で?」
「わからん」
太志自身も考えていた。
まともに付き合ったことはあるのかな?と姫乃は思っていた。
何か飲む?と聞くと水と答えたので太志さんにお水を渡した。
「日曜日の帰り、ウチに寄るか?」
太志さんが聞いてきた。
家族に会うという事だ。
多分太志さんはダラダラは嫌と言っていたから早く事を進めたいんだと思う。
「お邪魔するね」と返事をした。
「向こうで行きたい所はないか?」
「浅草で浴衣デートしたい」
「は?浴衣ならいつでも着せてやるのに」
「浅草でって場所がいいのよ(笑)」
「考えとく、あと、来月、地区の祭りで着せてやる」
「いつ?」
「9月の連休、夜だから大丈夫だろ」
と言うとふぅとため息をついた。
「ごめん、私おしゃべりだよね、疲れてるのに」
「まあ、確かに疲れてるけど、姫乃はおしゃべりというより疑問を投げかけてくる話し方をするから答えやすい、勝手に1人で喋ってるんじゃないから」