BARでエンジェルキッスをくれた貴方は老舗呉服店の御曹司でした〜カクテル言葉はあなたに見惚れて〜
再会
次の日の朝、10時にKOGUMAが開くと1階の受付から姫乃の席に内線電話がかかってきた。
「『宮乃』さん来られました」
「はい、すぐ行きます」
オープンと同時なんて珍しいな、いつもはもう少し遅いのに。
でも今日はすぐロケに出るから早いのは助かった。
「田辺さん、『宮乃』さん来られたから下におりるよ」
「はーい」
洗いに出すものを抱えて1階に降りていった。
「おはようございます、お待たせしま……した」
1階のロビーに立っていた背の高い人は…太志さんだった。
「あ…」
太志さんも姫乃に気づいた様子で…
「今日から担当になります、よろしくお願いします」
太志は軽く頭を下げた。
それでも姫乃の頭よりはまだ高い。
「よろしく…お願いします」
姫乃も頭を下げた。
田辺にたとう紙をテーブルに置いてもらって、汚れのひどい所を伝える。
田辺は姫乃の後ろに立っていた。
いつもはお年を召した方が来ていたのにまさか太志さんとは、それも『宮乃』に太志さんがいたなんてびっくりした。
「分かりました」と太志の少し低い声が姫乃の頭の上から聞こえる。
太志から洗いを終えて戻ってきたものを田辺に渡して「3階へ」と言うと田辺はそれを持って席を離れた。