BARでエンジェルキッスをくれた貴方は老舗呉服店の御曹司でした〜カクテル言葉はあなたに見惚れて〜
姫乃はゆっくり深呼吸をした。
「会えましたね」と姫乃はニコッと笑った。
「そうだね、びっくりしたよ」
姫乃は恥ずかしくて下を向いてしまった。
緊張する…
「私もです、お忙しいですか?」
少し間があり返事がなかったので姫乃は顔を上げた。
太志さん、笑ってる?
優しい目をして微笑んでいた。
「まぁ、忙しいから電話をしてないんだけど?」
「すみません…」
また下を向いてしまった。
「あの、担当が代わったと言うことは毎週会えるんですよね?」
「仕事だからな」
「そんな嫌そうに言わないで下さいよ、私は嬉しくて抱きつきたいのを我慢してるんですから」
フッと太志さんの声が聞こえた。
「可愛い事を言うなぁ、姫乃」
姫乃って呼んでくれた。
それだけでも嬉しかった。
「あの…」
姫乃が話そうとするとエレベーターから後藤達のカメラマンチームが降りてきた。
あっ、ロケに出なきゃだ。
「すみません、これから外ロケに出なくちゃいけなくて……また」
「あぁ、また」
太志はたとう紙を持って立ち上がった。
「ありがとうございました」と姫乃は頭を下げて見送った。
嬉しい、また会えた。
ヤバい、泣きそうになる。
姫乃は我慢してロケの準備をした。