BARでエンジェルキッスをくれた貴方は老舗呉服店の御曹司でした〜カクテル言葉はあなたに見惚れて〜
それからはスマホには電話はないが毎週木曜日に顔を見ることは出来た。
でも田辺さんが一緒にいるから話す時間はほとんどない。
女子社員の間では『宮乃』の今の担当の人が背が高くてかっこいいと噂になっていた。
1ヶ月が過ぎた頃には田辺さんが進んで前日に洗いに出す着物を準備して10時になると1人で1階に降りて待つようになっていた。
今までは来てから連絡があって降りていくのに、太志さんは10時丁度にいつも来るから田辺さんが行くようになってしまった。
私も会いたいのに…と思ったが田辺さんのやる気が見えるのはその時だけなので仕方なく任せることにした。
もちろん10時に来られるお客様もいるのだし、休みの時もそのうち出てくるのだから本当にいつも会える確証はないのだ。
仕事上、1番支障のない田辺さんがするのは当然なのだがやっぱり私だって太志さんの顔を見たいのは山々だった。
太志さんに会えない週が続いた時、姫乃の内線電話がなった。
「受付です、西さんに『宮乃』さんからお電話です」
ドキッとした。
下に田辺さんがいるはずなのに…
「お願いします」と繋いでもらった。
「も、もしもし、西です」
「あぁ、姫乃?」
「はい」
姫乃呼びが嬉しくてすぐに緊張してしまう。
電話だとなおさら低音のいい声が耳に響くのだ。