BARでエンジェルキッスをくれた貴方は老舗呉服店の御曹司でした〜カクテル言葉はあなたに見惚れて〜

太志の後ろをついて行くとベンチがあり座ろうとすると服を脱いでベンチに置いてくれた。

「太志さんの服が汚れます」

「いいよ、今日は暑いし、姫乃は黒だから汚れたら目立つだろ」

「ありがとうございます」

姫乃の制服は決まってはないが上が白のシャツで下が黒のパンツという格好なのは決まっていた。

スタッフだとすぐにわかるし、お客様の衣装を邪魔しない格好ということなのだ。

「どうぞ」と太志にお茶を渡した。

お弁当代は受け取ってくれないのはわかっているからせめてお茶くらいはと思って自販機を見つけるとすぐに買いに行こうと思っていた。

「唐揚げと生姜焼き、どっちがいい?」

太志さんは2つのお弁当を選ばせてくれた。

「いいんですか?」

「もちろん」

「唐揚げがいいです」

「ん」と渡してくれた。

いただきますと食べ始めると唐揚げ好きなんですよと姫乃は言った。

「俺も好きだけど揚げ物は昔みたいには食べられなくなったなぁ」

「まだ20代じゃないですか」

「いやぁ、もうおじさんだよ(笑)」

「そんなこと言ったら私も四捨五入で30ですよ?」

食べている間少しの間があり太志さんが先月誕生日だったんだよなと呟いた。

「っ、憶えててくれたんですか?」

手で口をふさぎながら姫乃は話した。

「乾杯したじゃないか」

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