BARでエンジェルキッスをくれた貴方は老舗呉服店の御曹司でした〜カクテル言葉はあなたに見惚れて〜
姫乃はありがとうございますとお礼を言って着せてもらった長襦袢を畳んでいく。
振袖は従業員さんが既に畳んでいて、たとう紙に入れられていた。
班長は会計の方に向かっていた。
「そうだ、西さん」
太志さんに西さんて呼ばれるの変な感じなんだけど。
「はい」
「今週の木曜日、ちょっと行けないんだけど出来ているから持って帰ってもらえないかな」
「はい、じゃあ班長に車の鍵を渡してきますね」
太志は荷物を車へと従業員に告げて「こっち」と先に歩き始めた。
奥に入ってもいいのかなと思いながら長い廊下を歩いていく。
スタッフルームや休憩室、事務所の前を通り過ぎ突き当たりのドアを開けるともう1つ建物があった。
ここが洗い場らしい。
今日は雨だがちゃんと洗い場の建物まで屋根も付いている。
袖から鍵を出してドアを開ける。
そっか、洗いの方はお休みだったっけ。
「急ぎの洗いがあったら連絡してくれるかな、誰かに取りに行かせるから」
「はい、ん?行かせる?」
「今週いっぱい、兄貴が帰るまでずっと店舗なんだよ、だから急ぎなら前の担当者が走るかな」