BARでエンジェルキッスをくれた貴方は老舗呉服店の御曹司でした〜カクテル言葉はあなたに見惚れて〜

席に戻ると後藤くんが声をかけてきた。

「どうした?顔が赤いけど?」

「え、ううん、大丈夫、暑いだけ」

後藤くんと筒井くんが何かを話していたが何も耳に入ってこない…

姫乃はカウンターに座っているさっきの男の人をチラッと見た。

1人で来てるんだ、常連さんかな、バーテンダーの人と時々話しているようだ。

チラチラと見ていると後ろを向いたので姫乃はすぐに目を反らせた。

下を向いているとこっちにやって来る足が見える。

見ていた事、バレてないよね…

足は右に曲がり喫煙所に入ったようだ。

あっ…煙草か

姫乃は顔を上げると透明な喫煙所でズボンのポケットから煙草とライターを出している所だった。

煙草をくわえてライターで火をつける仕草がとてもかっこよくて姫乃は目を奪われた。

ふぅーと煙を吐き出すと視線に気づいたのか姫乃の方を見た。

もちろん姫乃と目が合い、煙草をくわえると目を細めた。

姫乃は慌ててまた下を向いた。


やばい、ずっと見ちゃう…


チラチラっと視線をあげてしまうのだ。

何故こんなにあの人に惹き付けられるんだろう…

こんな感情は初めてだ。


後藤くんと筒井くんはバスケの試合を夢中で見ている。

でもまたあの人を見てしまう。

親指でトントンと灰皿に灰を落としていてちょうど下を向いていた。

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