BARでエンジェルキッスをくれた貴方は老舗呉服店の御曹司でした〜カクテル言葉はあなたに見惚れて〜
泣き声に気づいた太志は姫乃に手を伸ばそうとしたが、ぎゅーと自分の手を握り我慢した。
朝、姫乃はシャワーをしていつものように前髪ぱっつんのサラサラヘアに整えた。
そして太志が寝ているベッドの前のテーブルで化粧をする。
最後に昨日もらった口紅を塗って鏡の前でニコッと笑った。
後ろでシーツの動く音がした。
「ごめんね、支度の音がうるさかったかな」
「別に…」と機嫌が悪そうに言うとベッドから出て洗面所に向かった。
戻ってくるとマジックとかない?と聞かれた。
「あるよ」
姫乃は冷凍するときに書くのでキッチンに置いてあったのだ。
「はい、何するの?」
「内緒、あっ、喉乾いた、コーヒーって入れれる?」
「インスタントでいい?」
「うん、ブラックで」
「はーい」
キッチンに行った姫乃を見て太志はマジックを使い何かを書いた。
コーヒーを持ってきてくれてゆっくりと口にふくむ。
「あー、目が覚めてきた」
「本当に朝、弱いんだね」
「あぁ」
あっ、今日ゴミの日だ。
姫乃は各部屋のゴミを集めていく。
洗面所に行くと小さなゴミ箱に昨日買った使い捨ての歯ブラシが捨ててあった。