遠い星の君

(3年目 冬)

「俺、会社辞めて研究しに行くことにした」

芝から言われたとき、驚かなかった。

芝は博士まで勉強するほど好きなことがあって

会社という営利組織よりも

集中して好きなことができるほうがずっと似合っていた。

「そっか。おめでとう、研究頑張って」

「類はさ、吉川もういいの?」

「……あの人忙しそうだし、もういいんだ」

俺なんか眼中になさそうだし。

「人間の関係性の発展って

 きっと何かのタイミングだと思う。

 もし類が吉川のことまだ気になるなら

 そのタイミングが来るまでのんびり待てばいいよ」

相変わらず仙人みたいなこと言うやつだな。

「吉川ってマイペースだから

 きっと待ってれば何か起こるよ」

だといいんだけどね。

「まあ気が向いたら」
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