キスまでの距離
「……そんなに嫌な相手?……プッ」
「……笑うなんて酷い」
図星を指されて、随分間抜けな顔をしてしまったんだと思う。
真剣に話していたシンさんが思わず笑ってしまうほどに。
ただでさえ涙で目が腫れ、化粧がぐちゃぐちゃになっているのに最悪だ。
「悪かった。……で?」
一瞬、何の話をしているのか忘れてしまった。
「震えの止まったその口は、俺に何も話してくれないのか?」
そこまで言われて、自分の顔の酷さに意識が奪われていたあたしは、ようやく何の話をしていたか思い出した。