キスまでの距離


―――怖い!!



あたしは怖さの余り、その男の声でこちらを振り向きかけたシンさんに駆け寄って、その背中にしがみついた。


その男との距離を縮めることにはなるが、それでも一人よりは心強い。



「大丈夫だから」


シンさんの落ち着いた低い声があたしの中を浸透していき、不思議と震えが止まった。



―――大丈夫。シンさんがいるから。





「ダメだよ、唯ちゃん。僕以外の男が怖いんだから、そんな男にしがみついちゃ。早くこっちにおいで」

< 129 / 207 >

この作品をシェア

pagetop