キスまでの距離
しかし
「おまえは口出しするな!表に戻ってろ!!」
なんだかシンさんの怒りが増すばかり。
……一方あたしはというと、体を小さくさせて震えていた。
ただでさえ男が怖いのに、こんな風に怒鳴られては、怖さで口を開くこともできない。
もちろん、あたしが悪いってことはわかっている。
シンさんの怒り具合やお客様の怒り具合から、卓番間違いってのは本当にやってはいけないことなんだと、痛いくらい身に滲みた。
だけど、自分が悪くても、男への恐怖感が植え付けられているあたしは、男に怒鳴られるとただ体を震わすしかできなくなるんだ。
「森永、反省しているのか!?何とか言ったらどうなんだ!!」
シンさんのキツイ瞳を見ることすら怖くて、あたしはずっと俯いていた。