キスまでの距離


確かにコイツに唇を奪われた時はまだ辛うじて男が平気だった。


本当にダメになったのは、初彼にキスをされた時だ。


大好きな彼だったのに、キスをされてコイツの顔が脳裏に浮かんでしまって、あたしは初めて吐いてしまった。


その時の彼の表情の変わり様があたしの心に深い傷を作った。



それまで愛おしそうに優しい瞳であたしを見ていたのに、吐いた瞬間、汚いモノを見るような嫌悪に満ちた瞳に変わった。




それから男を信じられなくなったんだ。


あたしを好きって言ったあの言葉は偽りだったんだと。

男は平気で嘘を吐けるんだと。

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