キスまでの距離
あたしはすぐに気付いた。
そのお料理とは、きっと送別会のあの日、唯一おいしく食べられたあのお料理だ。
どうして今はメニューにないお料理がと不思議だったけど、それはシンさんとあたしの思い出のお料理だったから。
だから、きっとシンさんはあたしに食べさせたくて――……。
そういえば、4年前も100%オレンジジュースを飲んだんじゃなかっただろうか。
あたしはどこでも100%オレンジジュースを飲んで、いつも母に飽きないわねって呆れられる。
多分、胡蝶での食後のドリンクでも繰り広げられていたはずの光景だ。
「何か辛いことがある度に唯の表情を思い出し、いつかまたあんな顔をしてもらうんだと頑張れた。いつしか、ずっと唯においしい料理を食べさせたいと思うようになっていて、すぐに唯が好きだと気付いたんだ」