キスまでの距離


あたしは何も言えなかった。



そんなに昔から、話したこともないあたしのことを想ってくれていた?



アイツの5年にも渡る想いはただ重くて、気持ち悪くて、怖かった。






でも、シンさんの気持ちはただ嬉しいの。



あたしの瞳は決壊していた。



ボロボロと零れ落ちる涙をシンさんの温かい舌が拭い取ってくれる。



「だから、あの夏の日、もう二度と会えないと思っていた唯に再会して、俺は嬉しかった。唯が男性恐怖症になっていたことは驚いたけど。でも逆にチャンスだと思ったんだ。男を寄せ付けない唯になんとか近づけたら、唯の心を手に入れる可能性があるんじゃないかって。だから、賭けていたんだ、夏に。唯を手に入れてみせると」

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