キスまでの距離
「……逃げられないよ。ここには森永と俺しかいない。もう営業時間は終わってるんだから」
本能的にシンさんが言っていることは真実だと悟る。
確かに、先程から他の人の気配を感じない。
「……ハ、ハルは?」
やっとの思いで、小さな音を紡いだ。
「目覚めたら送って帰るって言ったら、よろしくお願いしますって言って帰ったよ」
頭がクラクラした。
あたしが男性恐怖症って知ってるくせに、どうしてシンさんに任せるのかな。
これも荒療治の一つ?
「……俺がおまえの男性恐怖症を治してやるよ」