キスまでの距離


そう。



こんな日に限ってお客様は男ばかりだったのだ。


女性がいたとしても、カップルなので男もいる。



女性だけのグループという、あたしが安らげるお客様は一組もいなかった。





しかし、これも仕事。



あたしは重い息を吐きながら、料理片手に客席に向かった。



「和牛サーロインステーキでございます」


にっこりと極上の作り笑いを浮かべ、あたしはステーキを男達の前に置いた。

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