キスまでの距離


それでも断り続けていると、やがて男は痺れを切らしたように立ち上がり、あたしの腰に腕をやって引き寄せた。



……あたしは、何が起こったのかわからなかった。


厭味な程にきつくて臭い香水の匂いが鼻につく。


気持ち悪い温もりがあたしを包む。




抱きしめられていると気付いた時には、あたしの体は震えていた。


嫌だ。



嫌だ、嫌だ、嫌だ!!



「震えちゃって可愛いね」


男に耳元で囁かれ、あたしはゾワッと鳥肌が立った。

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