キスまでの距離


「大丈夫か?」


事務所に戻って開口一番、シンさんはあたしに尋ねた。


「……はい」


あたしは力の抜けた体を事務所の椅子に預けながら、答えた。


シンさんの足音が静かな事務所に響く。


近づいてくるその音に反応して、あたしは顔を上げた。




その次の瞬間




あたしはシンさんの胸の中にいた。



抱きしめられていると、すぐに気付く。

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